研究課題
基盤研究(C)
今年度の研究は、「ライプニッツの物体論」に関して「物体の経験的認識の合理性の位置づけ」を行うことに向けられた。その成果の一部は、第8回国際ライプニッツ学会で口頭発表し、公刊された「ライプニッツの夢論証と物体の実在性」に現われている。この発表では、よく知られたデカルトの夢論証を念頭にしたライプニッツの夢と現実の区別の有無、識別基準に関する興味深い考察、つまり「カリブの夢」の逸話の考察が、物体の本質としての「延長」と「力」をめぐる自然学的および形而上学的考察と関連する点を示した。ライプニッツの物体の認識論に外在主義的とも呼べる側面があることを示すと同時に、日常経験と自然科学の対象となる「物体」の因果性と実存性をめぐる経験的認識の位置づけが課題であることも指摘した。その後、この因果性の問題をライプニッツがどう捉えていたかに取り組んだ。その成果は、慶應義塾大学のCOEプログラムに関連する「ライプニッツ研究会」で2007年3月末に、「自然法則の偶然性と「因果性」の分析-ライプニッツの知識論の一視角-」と題して発表する予定である。その成果も論文発表する。なお未公刊であるが、今年度は、その他、研究成果の欄に記述したようなライプニッツ研究に関する貢献を行った。『哲学の歴史』では最近の研究状況を踏まえ、新しいライプニッツ解釈を提示し、『ライプニッツを学ぶ人のために』では、普遍記号法の現代的意義を論じた。また、『リスクと合理性』の翻訳は一見ライプニッツとは無縁と思われるが、不確実性を踏まえた合理的意思決定の問題は、そこからライプニッツ哲学における合理性問題を再検討する多くの手掛かりがつかめるものと考えている。
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Internationaler Leibniz-Kongreβ,Einheit und Vielheit,Vortrage (ed.H.Breger,J.Herbst und S.Erdner) VIII
ページ: 580-587