研究課題
本年度は、理論的には、自己決定という理念の系譜と展開を、「私」の自己決定と「私たち」の自己決定とのせめぎ合いというかたちであとづけるとともに、自己決定がそれにかかわる諸要素のどのようなトレード・オフにかかわっているかを、組織のなかにおける自己決定のありかたやパターナリズムと自己決定との関係などを素材に検討した。このような理論的考察は、自己決定と他者とのかかわりを思想史と現代社会の両面において具体的に明らかにするものとして意義がある。また、実証的には、医療従事者が、医療にかかわるさい、どのような要素を考慮にいれて、自分なりの判断や選択をおこなっているかについて、一般的な認識をたずねるアンケート調査を、医師や看護師350名ほどを対象におこなった。アンケートの内容としては、先年度の予備調査(聞き取り調査)で標準的なひとつのモデルを抽出することがきわめて困難であることがあきらかになったので、自己決定のありうるパターンや考慮されうる諸要素をさまざまに探索するものとした。結果の分析自体は研究計画において20年度におこなうことになっているが、こうした調査は、自己決定一般の構造を抽出する素材としてだけでなく、従来、医療現場においてあまり意識されることのなかった医療従事者の自己決定の「存在」や「困難さ」や「可能性」を具体的に検討の対象としている点で、調査として先駆的なものである。
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琉球大学法文学部紀要『人間科学』 20
ページ: 35-64