研究概要 |
下記の哲学的な基礎概念に関して認知言語学的なメタファ理論から、そのメタファの構造と機能を、身体性という観点から分析した。まず、Reflectionという概念に関して、その背後にある光学的メタファと肘などの関節に関わる屈折運動が、意識の自己関係的運動を表現するのに使用されたことが解明された。特にこれはロックのテキストの分析を通じて行われた。そして、この反省概念に関しては、デカルト以来のヨーロッパ哲学の中心的理論が関わっているが、それかせ20世紀においてハイデガーやガダマーでは,超越論的主観主義の否定とともに徹底的な批判にさらされることとなった。しかし、意識の次元での自己関係的屈折構造の表現としては、ハイデガーにおいても、DaseinのSein理解の中に込められた自己関係的構造として保存されていることを明らかにした。それから、Substanceという概念に関しては、ギリシャ語のhypokeimenonにまで遡り、その概念の日常的意味内容、つまり家屋敷という不動産としての意味内容が、抽象的な概念、つまり「基体」という概念として使われ、それがsubstantiaというラテン語に翻訳されて、真に存在するものという意味を獲得するようになったことを、メタファ理論の視点から考察した。この分析にもousiaにまつわるハイデガーの分析を援用した。 以上の概念に関しては、哲学史的考察と語源的考察を予備考察としつつ、その身体的経験にまで遡るものであった。 また、「時間」にまつわる表象に関して、フッサールの時間意識の分析では、時間の流れの中で経験される対象の同一性が保持される「水平」の方向性と、一つの時点ですべての体験が重層的に共存する「垂直」方向の構造とが指摘されているが、本研究では、認知言語学者R.ラネカーによるAspectに関する分析がフッサールの時間分析と酷似していることが明らかとなった。
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