平成18年4月1日〜平成19年3月31日の研究実績について、実績事項とその内容の概要を時系列に以下でまとめ記しておく。 (1)平成18年6月に次の著書を刊行した-『使えるヘーゲル』(平凡社新書)。本書において、ヘーゲルの「法・権利の哲学」の基本思想が現代の<公共哲学>の論題といかにリンクしているのか、あるいはリンクしていないのかについて、「福祉」の問題展開を中心に叙述した。 (2)平成18年7月2日に開催された京都ヘーゲル読書会(学会、京大会館)において次の論題で研究発表を行なった-「現代の<公共>哲学とヘーゲル」。本報告において、ヘーゲルの市民社会論の内容が公共哲学のモデルになりえるにもかかわらず、現代の公共哲学の研究者のほとんどが誤解ないしは無視・軽視していることを資料にもとずいて説明した。 (3)平成18年10月5日〜平成18年10月14日、ドイツのハイデルベルク大学とミュンヒェン大学(図書館をはじめ周辺の関連資料館・研究所)において資料・文献の調査と収集を行なった。特に、ハイデルベルク大学を擁するバーデン・ヴユルテンベルク王国の19世紀当時の国制改革の状況に関する貴重な資料を得ることができた点、ミュンヒェン大学名誉教授のR.ラウト氏と懇談(近代バイエルン王国とヘーゲル哲学との連関に関する)できた点が有益であった。 (4)平成19年3月13日〜平成19年3月21日、ドイツのミュンヒェン大学とハイデルベルク大学(図書館をはじめ周辺の関連資料館・研究所)において資料・文献の調査と収集を行なった。今回の調査では、特に近代バイエルン王国建設の基礎となった(1)モンジュラの「1796年アンスバッハ覚書」、(2)1808年憲法、(3)1818年憲法、等のきわめて貴重な原文資料を閲覧し、コピーすることができた点が最大の成果である。これらはまだ邦訳もされていないので、私は今精力的に翻訳し、分析し、そして論文にまとめているところである。
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