平成19年4月1日〜平成20年3月31日の研究実績について、実績報告とその内容の概要を時系列に以下でまとめ記しておく。 (1)平成19年4月21日に開催された名古屋大学哲学会(於・名古屋大学)において次の論題で研究発表を行なった-「二つのヘーゲル研究」。本報告において、ひとつには19世紀初頭ドイツの近代バイエルン改革およびプロイセン改革とヘーゲル国家論形成との密接な関連について、もうひとつには現代の公共哲学の研究者がヘーゲルの市民社会論と国家論の内容を誤解していることについて、資料に基づき説明した。 (2)平成19年9月19日〜平成19年10月1日、ドイツ・ベルリンの国立図書館およびフンボルト大学図書館で、資料・文献の調査と収集を行なった。今回の調査では、近代プロイセン改革を主導したシュタインの「ナッサウ覚書」(1807年6月)、「10月勅令」(1807年10月9日)、「都市条令」(1808年11月19日)、ハルデンベルクの「リガ覚書」(1807年9月12日)、等の貴重な原資料を得ることができた。資料を分析し、シュタイン・ハルデンベルク改革がヘーゲル国家論形成へどう影響したか論文にまとめたところである。 (3)平成20年3月に次の論文を雑誌に発表した-「バイエルン改革とヘーゲルの国民主権論-二つの<近代国家>類型」(『思想』岩波書店、4月号)。本論文において、近代バイエルン王国建設の基礎となったモンジュラの「アンスバッハ覚書」(1796年)、「1805年国家公務員法」、「1808年憲法」を分析し、モンジュラ主導のバイエルン改革は国民議会無しの近代公務員制度による「国家主権型」の近代国家づくりと定義し、一方当時バイエルン王国で新聞編集長やギムナジウム校長職をこなし、その間に国家論を構築していったヘーゲルの理論は「国民主権型」の近代国家論と定義し、両者には大きな相違もあることを論じた。
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