主な研究成果は以下の通りである。 1.「バイエルン改革とヘーゲルの国民主権論-二つの<近代国家>類型」(『思想』岩波書店、2008年4月号) モンジュラによって主導された近代バイエルン王国の建設と改革の経緯を、主に「モンジュラ・1796年アンスバッハ覚書」、「1808年憲法」の分析を通して明らかにし、官僚制優先の国家主権型の近代国家と定義した。一方、ヘーゲルの1817/18年「法・権利の哲学講義」にみられる国家観は、国民によって選出された議員により構成される立法権・議会権限を最優先する国民主権型の近代国家と定義し、モンジュラ型と区別した。 2.「プロイセン改革の推移とヘーゲル国家論の変容-<君主制内の民主主義的原則>の実現」(未発表) シュタインとハルデンベルクにより主導された近代プロイセン改革は、まずシュタインによる「ナッサウ覚書」(1807年)、「10月勅令」(1807年)、「都市条令」(1808年)により進められ、きわめて鮮明な国民主権型の国制改革となったが、引き継いだハルデンベルクでは国家宰相への権限集中と官僚制度の整備がはかられ、国家主権型の国制改革となった。ヘーゲルの1820年『法・権利の哲学要綱』は、ハルデンベルク型の国家論となっている。先にみた1817/18年「法・権利の哲学講義」から国家論がなぜ変容したかについて時代的背景から明らかにした。 3.「現代の<公共哲学>とヘーゲル」(未発表) まず、現代公共哲学のほとんどの研究者がヘーゲル哲学の核心を国家主義哲学と理解している点を批判した。次に、ヘーゲルの市民社会論に注目するなら、その内容が市場と公共とがリンクしたものとして構成されているために、公共哲学のモデルになりうることを明ちかにした。
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