研究概要 |
本研究は、J・J・ギブソンの生態学的心理学に包含される認識論・存在論を哲学的に敷衍し、生態学的立場の哲学の確立を目指す。(1)身体-環境存在論、(2)社会環境論、(3)道徳・倫理分野へのエコロジカル・アプローチの応用、を主な課題とする。申請書通り、平成18年初年度は、3年間の基礎的作業を行いながら、(1)〜(3)のそれぞれの課題について研究を進める予定とした。 結果としては、予定以上の活動を行なうことができた。 (1)身体-環境存在論にっいては、"Redefining the temporal nature of experience"において時間意識の出来事知覚としての構造を分析し、「他者問題とクオリア」では、クオリアと呼ばれるものが環境の生態学的特性に他ならないことを論じた。日本心理学会第70回大会では、ワークシップ『J.J.ギブソン流の「エコロジカル」な視点から心理学を再考する』で話題提供を行なった。 (2)社会環境論については、「万人のための社会"をデザインする」を発表し、ATとUDの効果と意義を生態学的アプローチの観点から分析した。また、日本経営倫理学会第14回研究発表大会では、組織環境における倫理意識の分析に関する共同研究発表「コミュニケーションと組織倫理の教育」を行い、同会誌に論文発表した。 (3)道徳・倫理分野へのエコロジカル・アプローチの応用については、『アフォーダンスと個体のための倫理』(仮題)の原稿を出版社(講談社)に提出し、現在、校正中である。心の科学の倫理に関して、シンポジウム「赤ちゃんの脳、子どもの脳」(JST/RISTEX主催,2007/3/4,於北海道大学)のおけるコメンテータ、ワークショップ『科学技術倫理セミナー(8):発達神経科学研究の倫理』(北海道大学創成科学共同研究機構主催,2006/3/5,於北海道大学)において、「心的内容の規範性と脳科学」というタイトルで研究発表をした。
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