研究概要 |
本年度は,第一次サイバネティックスの主要な思想家であるN.ウィーナーおよびW.マカロックの学説の要点を,メイシー会議の議事録や彼らの諸著作を拠り所にしながら確定する作業に取り組んだ。また第二次サイバネティックスへの過渡期において重要な役割を果たしたイギリスの精神分析学者であるR.アシュビーの思想の分析に取り掛かった。 ウィーナーについてはすでにいくつかの科学史的なアプローチからの研究は存在するが,その哲学的な含意を掘り下げる研究は存在しないといってよいし,アシュビーの思想についての研究に至っては皆無と行っても過言ではない。こうした研究状況において,本研究はサイバネティックスについての哲学的なアングルからの本格的研究を緒につかせるものだと考えている。 情報社会の知のパラダイム確定作業においては,情報社会時代がその理論的なバックボーンとする「ポストモダニズム」を,法と倫理,私と他者,心と物,言語と映像,メディアと社会という五つのアングルから解明し,と,同時に「身体性」と「表現」を基礎とする新しい世界観をも呈示した。また映像というメディアが情報社会において果たす役割をルーマンの議論に即しつつ考えた。 情報社会についてもその社会学的,メディア論的な研究は多数存在するが,その哲学的検討は存在しなかったはずである。今後とも継続的に「メディア」や「コミュニケーション」概念の哲学的分析も含めて当該分野の研究の進展に貢献したい。
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