本研究の目的は、西洋中世哲学と現代哲学との対話を促進し、現代哲学の視点から中世哲学の新たな解釈を試みると同時に、逆に現代哲学の課題に対して中世哲学のアイデアを提示することによって、その解決に向けた現代の議論に貢献することである。中世における存在論、とくにトマス・アクィナスやガンのヘンリクスの《esse》の理論には、この世界における人間の有限な言語と永遠性(神)との何らかの意味表示関係という、現代には知られていない重要な意味論が含まれている。これらの理論を現代の意味論や語用論の観点から、とくに「存在は述語ではない」に代表される現代分析哲学の「存在」解釈という問題との関連の中で検討することによって、中世哲学における意味論と語用論の諸相を現代の分析哲学に理解可能な文体で提示することを意図する。
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