1、パリのフランス国立図書館に所蔵される敦煌本『論語義疏』について。 2008年12月23日から2009年1月2日まで、現地に赴いて実物を調査する機会を得た。日本人で敦煌本『論語義疏』の実物を手にとって精査した人は皆無に近い。 この写本は学而、為政、八〓、里仁の一部であり、全篇が揃っているわけではないが、罫線が引かれた中に書かれ、書名を示す朱引きのほか、科段を示す鉤や円形の符号、破読字点などが朱筆で書き入れられていて、東洋文庫に所蔵されるモノクロの写真では確認できなかった様々なことが判明した。詳細については、後日発表する予定である。 2、所在の判明した35種の写本を用いて武内本、儒蔵本の校勘を行うことについて。 現在、鋭意進めている最中であり、一篇ずつ公表する予定である。 また、35種のうち最も詳細に訓点が附されている「大槻本」について、その訓点に基づいて訓読したものを順次発表することにし、現在「皇侃自序」「何晏集解序」の部を公刊した。 3、未だ所在不明の写本の捜索について。 新たに吉田氏文淵閣蔵本(室町中期以前写本)が存在することを長澤規矩也氏の著書から知り、現在も古書店として営業している吉田氏浅倉屋まで出かけたが、残念ながら戦前の記録はすべて戦災で焼いてしまったとのことで、詳細は不明であった。
|