研究概要 |
1. 平成15・16年度科学研究費の成果である、無著造『顕揚聖教論』における菩薩と聖弟子声聞の修行階梯・内容の区別に基づく瑜伽行学派の成立研究をもとに、同じく無著の著作である『大乗阿毘達磨集論』(および『大乗阿毘達磨雑集論』)、『攝大乗論』における菩薩と聖弟子声聞の修行階梯・内容の区別による研究を行った。 2. その結果、次のような結論を得ることができた。無著の思想を集大成した『攝大乗論』は次の三種の思想を継承しつつ、瑜伽行思想を完成させたと理解することができよう。 1) 阿含経典以来の伝統的教理は『瑜伽師地論』を経て無著造『顕揚聖教論』に伝承された。その『顕揚聖教論』に説かれる菩薩と聖弟子声聞の修行階梯・内容の区別と併置関係を『攝大乗論』は継承した。 2) 阿毘達磨仏教で成立した精緻な仏教教義は、大乗的変容を受けながら無著造『大乗阿毘達磨集論』に伝承された。この大乗的アビダルマ理論を『攝大乗論』は継承した。 3) 『解深密経』などの大乗経典に説かれ、『大乗荘厳経論』に代表されるいわゆる弥勒論書において展開された、新たな瑜伽行思想の根幹である、阿頼耶識論・三性説・菩薩道の体系を、『攝大乗論』は継承した。 以上の研究成果は、2007,年12月8-11日中国広州中山大学人文学院仏学センターで開催された「Academic Conference'International Sympoosium on Yogacara Buddhisim:East-Asian Thought and Buddhist Tradition(唯識学思想と東アジア仏教伝統に関する国際学術会議)」において、「On a Buddha-kaya Theory in the Hsien-yang-sheng-lun by Asanga」の論題で発表された。その論文は公刊準備中である。
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