平成20年度は、『婆沙論』に引用される1500ヵ所以上の経典(主に阿含経)の出典を見つけ出す作業を継続して行い、作業を進展させることができた。更には、アビダルマ文献の中の哲学的議論の展開過程を基準にして、『婆沙論』をはじめとした有部アビダルマ論書の関係を解明するという作業にも着手し、その第一歩として、アビダルマ哲学における「物質概念の変遷過程」の研究を行い、成果を発表した。また、律蔵中のアディカラナの概念形成過程がアビダルマ思想の形成に深い影響を与えたとの予想に立ち、律蔵を中心資料としてアディカラナの研究を継続してきたが、それも20年度において、一応の結論に達したので、それを発表した。
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