研究課題/領域番号 |
18520049
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
鍋島 直樹 龍谷大学, 法学部, 教授 (90198375)
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研究分担者 |
内藤 知康 龍谷大学, 文学部, 教授 (60247814)
杉岡 孝紀 龍谷大学, 文学部, 助教授 (70298727)
岡田 康伸 京都大学, 大学院教育学研究科, 教授 (90068768)
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キーワード | 仏教 / 心理療法 / ディープリスニング / 阿闍世 / 箱庭療法 / ユング / 親鸞 / 人間理解 |
研究概要 |
研究会議2回と国際会議(Deep Listening, Deep Hearing : Buddhism and Psychotherapy East & West.平成18年7月29日〜8月2日オレゴン大学ヒューマニティセンター)を開催した。国際会議はオレゴンの新聞にも紹介され、300名を超える聴衆があった。 相手への関わり方に、「分析」によるものと「深い傾聴」によるものとがある。「分析・技術」によって、相手の苦しみを理解する態度とは、フロイトやユングなどの心理分析の理論を活用しながら、相手の症状を分析し理解するものである。分析によって、相手の病気の範疇を特定することができる。しかし他面、分析は、相手の理解を一つに固定化する恐れがある。分析によって、その時点での心境はその通りであっても、その症状そのままが相手の人格として特定されてしまう。個人の心は、ユングも明かすように、「一つ一つのケースがユニークであり、まったく新しいセラピーが毎回求められる」ものである。したがってセラピストがクライエントを理解する際には、深層心理学、アーキタイプ(原型)を心に留めつつ、フロイトが記しているように、「厳格なルールを破るような心理療法」も重要である。「深い傾聴・ディープリスニング」には、聴と聞とがある。聴くとは、こちらから相手の心に耳を傾けて聴くことである。仏にゆるされて聴くことである。聞くとは、相手の心が向こうから聞こえてくることである。仏の呼び声が聞こえてくることである。クライエントが求めているのは、症状を病気として精緻に診断されることではない。苦しみのなかで孤立しているからこそ、相手に深いいのちの絆を求めている。したがって一つの症状に固定して相手をとらえず、無限の創造性をもっている存在として、相手に接することが大切である。深い傾聴によって、相手の心は一つの心理学的な鋳型にあてはめられることなく、思いもかけない本人の創造性によって、変化、成長をとげていくことができるだろう。
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