本研究は、現代の日本社会に生起する多様な人生問題に対して、既成宗教・民俗宗教(宗教習俗)と新宗教教団が、それぞれどのような解釈をし、どのような方途を用いてその解決を図っているかを、実証的に明らかにすることを目的としていた。その研究目的を達成するために、 (1)特定の地域を選出した現地調査と、(2)任意の複数の新宗教教団を対象とした教団調査の両面から、調査・研究を行った。(1)に関しては、地域社会における人生問題の解釈と解決を理解するための基礎的調査を行った。福岡県筑紫野市塔原地区を調査地とし、大都市近郊の地域生活と宗教習俗の変容と持続を明らかにした。当該地では、近年の宅地開発によって、新旧住民の混住化が進んでいるが、地域の生活慣行や宗教習俗への関わりには、新旧住民間において明確な棲み分けがみられた。(2)に関しては、立正佼成会、生長の家、善隣教、創価学会、念法真教、世界救世教を対象教団とした。それらの教団のうち、立正佼成会については、九州二教区の在家役職者を対象とした質問紙調査を行った。その他の教団については、複数名の調査協力者で分担して、それぞれ参与観察、資料収集、聞き取り調査等を行った。調査の結果、それぞれの教団には、生命主義的救済観の存在、秘儀的実践と倫理的実践の組み合わせなどの共通性があること、他方で具体的な説明図式や解決手段には多様性があることが明らかになった。 残された課題は少なくないが、地域生活と結びついて人生問題の解釈と解決に関わってきた宗教習俗の変容/持続と、現代社会の人生問題の解釈と解決に最前線で取り組んでいると考えられる新宗教教団の宗教戦略の実態解明に関し、一定の成果をあげられた。調査・研究の成果は、平成20年3月刊行の研究成果報告書にまとめられている。
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