宗教間対話あるいは宗教の神学において、比較的広く用いられている類型に排他主義、包括主義、多元主義がある。そして宗教多元主義の立場からは、しばしば、排他主義や包括主義は克服されるべき前時代的なモデルとして批判されてきた。本年度は、そうした従来の宗教問対話モデルでは説明できない事例として「原理主義」に注目し、それを欧米だけでなく日本近代史との関係において研究した。 「原理主義」と名指しされる宗教復興現象の多くに、多元主義的な啓蒙的価値・近代主義に対する抵抗の姿勢を見ることができる。それは単にプレモダンへの伝統回帰ではなく、モダニズムの影響を多分に受けながら、それに包摂されない価値観を打ち立てようとしているという点ではポストモダンとさえ言い得る要素を有している。 そのことを近代日本宗教史と比較することを通じて、日本においても「ファンダメンタルなもの」を追求することによって、西洋近代と対峙しようとした類似の思想構造があることを認識するに至った。近代化を急いだ日本の場合には、プレモダン・モダン・ポストモダンが一時期に混在し、結果的に、そのことが戦争や植民地主義を正当化するイデオロギーにつながっていったことを考察することができた。 本年度の研究成果の一部を、アメリカ宗教学会年次大会(2006年11月、ワシントンD.C.)で"Conflicts between religious and modern values in post-Meiji Japan : A comparative monotheistic study"として、また、日本基督教学会近畿支部会(2007年3月、神戸女学院大学)で「宗教多元主義モデルに対する批判的考察-「排他主義」「包括主義」の再考を通じて」として発表した。
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