本年度は、特に、韓国の財団法人国学研究所が発掘・収集した各種新出史料の提供を受け、日本植民統治下1920〜1929年の時期における檀君系教団の活動について研究を行った。朝鮮国内で布教活動を行った檀君教に関しては、『檀君教約条』(韓国独立記念館所蔵本)、教主鄭薫模の親筆本である『礼式』『檀君教宗令』『入教節次』、総督府出版不許可とされた『天乙仙教』『檀君教宗憲』、鄭薫模の族譜などを新たに入手した他、大?教に関しては、初代教主羅〓の族譜、中国領内の西道本司を主管した申圭植の『韓国魂』『児目涙』(いずれも中国語原本)や朝鮮国内の南道本司に所属した成世英の『本司行日記』を新たに入手し、各教団の活動内容について具体的な調査を行った。その研究成果の一部を、2007年12月15日に九州大学韓国研究センターで行われたシンポジウム「国際研究集会2007見る・学ぶ・暮らす-比較植民地学の樹立を目指して」にて公表した。 また、『朝鮮日報』『東亜日報』『毎日申報』などの新聞や植民地期に刊行された各種雑誌に掲載された檀君関連記事を収集・分析した結果、1920年代後半から崔南善らを中心に展開された朝鮮国学運動が、檀君教や大?教南道本司の布教活動と密接に結びついている事実を明らかにした。特に、19世紀末に日本神道界で唱道され、日鮮同祖論の根拠とされた「檀君=素盞鳴尊」説が、内田良平ら黒龍会人士たちを通じて檀君教系思想家たちに伝達された際、朝鮮が日本を領有したという対抗的な民族主義言説へと変容させられていった事実を明らかにし、その研究成果をもとに「東アジア近代における国教創設運動と日鮮同祖論-『檀君即素盞鳴尊』説を中心に-」という研究報告を行った。
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