本年度は平成15〜17年度に交付された科学研究費補助金若手研究(B)「中世日本における禅宗の請来に伴う宋代風水の受容に関する研究」(課題番号15720015)の内容を継承し、同研究で対象から漏れた主として13世紀において日宋・日元間を往来した禅宗僧侶の調査と、彼等が開創した寺院の調査を行なった。 このうち僧侶の調査については、諸僧の著述から風水関係用語を検出することを試みたが、特にそれを匂わせるものの検出に至らなかった。また僧伝の分析も行ない、その往来が博多と浙江省一帯との往来が主となっていることが判ったが、歴史学的には肥後・薩摩・大隅においても対宋・元交易をしていることも判明しつつあることがあり、この点のさらなる調査が課題となった。また来日中国僧については現在の江西・湖北・湖南・安徽・河南・江蘇・浙江などにて遍歴した場合が主となり、これらが江西派風水の展開地域であることから、その影響に基く伽藍の空間意識をもたらした可能性が推定される。 また寺院の調査については、松島瑞巌寺、京都東福寺および鹿児島感応寺・大慈寺において行ない、参考寺院として大徳寺・妙心寺の調査も行なった。特に松島瑞巌寺では現在とは軸線を異にする日伽藍の存在が発掘によって一部判明しつつあり、空間分析においてはこの発掘の調査報告を待つ常態になっている。また鹿児島の調査では両寺院とも発掘が行なわれていないことから、当初の伽藍について知ることができなかったが、微細地名との関係を考慮すべきいくつかの伝承があったので、その歴史的整合性についての検討が今後の課題となっている。
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