研究概要 |
本年度は(1)13世紀において日宋・日元間を往来した僧侶全般に関する調査、(2)浙江省における禅宗寺院の調査、(3)11世紀より14世紀における庭園技法に関する調査を行なった。 このうち僧侶の調査については、前年度に引続き諸僧の著述から風水関係用語を検出することを試みたが、特にそれを匂わせるものの検出に至らず今後も引続き調査が必要となった。僧伝の分析では昨年同様博多と浙江省一帯との往来が主となっていることが判ったのみであるが、日本禅宗につながる中国禅宗の展開について時期と地域との関係を見る必要性が新たに出てきた。 国内での寺院の調査は近世の創建ながら禅宗伽藍の典型と称される高岡の瑞龍寺において行ない、近世における禅宗伽藍の軸線の意識が中世におけるそれと相違していることを確認した。これは中世・近世間における軸線の意識に変化が起こっていることを意味しており、江西派風水の影響の下限を知るための指標の一つと見られる。 空間分析については中部大学の渋谷鎮明・山本貴継、富山国際大学の浦山隆一各氏とのディスカッションを通して、日本同様に江西派風水の影響を初期的に受けていると推察される朝鮮風水との対比における龍脈説の景観認識に関する検討を行ない、同じ龍脈説による景観でも日朝間でその認識に差異があるのではないかとの意見を得た。 浙江省における調査では、寧波の天童寺・阿育王寺、台州の国清寺などを中心に、日本仏教と関係のある寺院の景観調査を行なった。 庭園技法に関する調査については,発掘報告書などを手掛かりに中世庭園のデータ収集に努めた。
|