研究の全体構想は、日本における風水の受容と定着・展開に関する全体像を把握することにあり、これはさらに上位の研究構想である、日本における中国民間思想にもとづく宗教的諸思想・技術の受容と展開に関する研究の一端をなすものである。 本研究の目的は、特に中国において風水思想・技術が一大変容を遂げた9世紀末期から10世紀中期の影響を、日本が人的・交通路としてどのルートで受容し、日本の内部で誰がどのように現象化したのかを明らかにしようとするところにある。 直接の研究内容としては、まず日宋交流の大きな担い手である禅僧と商人による日宋交流の実状を追うことによって、人的・交通路としての受容ルートの解明をはかり、入宋僧・渡来僧の開創した禅宗寺院を中心とした禅宗寺院の伽藍空間の分析、それらの僧の著作や僧伝あるいは寺誌などに見られる風水用語の検出、また商人や禅僧の手を経て流入したと思われる邸宅空間(特に庭園構成)の分析を通して江西派風水の特徴の検出を行ない、中世日本において宋代風水の様式として江西派風水の思想と方法が伝来していたことを明らかにする。
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