研究課題
基盤研究(C)
本研究は、マックス・ヴェーバー研究とロシア思想史研究との間を「架橋する」位置づけを持つ研究である。当該研究期間に、邦語論文1本と、ロシアの雑誌にロシア語論文1本を発表した。前者は、2世紀末ロシアの歴史的転換の中で、本研究テーマが生成した所以とその意義を論じたものである。後者のロシア語論文は、平成18年度に本研究費によるモスクワ出張の際に、当地の社会学理論の専門研究者から、先に本研究者がドイツで発表していた英語論文のロシア語訳の刊行を要請され、編集委員会の査読を受けた後モスクワの社会学系雑誌『ロシアの道』に発表したものである。再資本主義化という独特な歴史状況のなかで、一方では近代資本主義生成期においてプロテスタンティズムの宗教倫理の役割に着目したヴェーバー理論への関心と、他方ではロシア正教とその宗教倫理の再評価というナショナルな心情とが結びついた所に、世紀末のロシアにおける「ウェーバー・ルネサンス」が生じたことを主として論じている。20世紀初頭のセルゲイ・ブルガーコフが(合法)マルクス主義から宗教(正教)哲学への思想転換に際して、彼自身による「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の受容が大きな役割を果たしたこと、さらにこのことが世紀末の現代ロシアにおいて社会学理論の研究者ユーリー・ダヴィードフによって「再発見され」、彼においてロシアのヴェーバー研究が西欧学界の現代ウェーバー研究に接続するとともに、そのヴェーバー研究によってロシア思想史にも新たな光を当てる成果をもたらしている点を明らかにした。本論文は、広くヴェーバーとロシア思想に関心を持つロシア人読者にも、日本のしかも一地方大学の研究者による新たな視点からする研究成果を提供できたものと信ずる。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件)
Пути Росии XIV
ページ: 51-67
≪Пути России≫,Вып. XIV(преемственность ипрерывистость общественногоразвития),Москва,Москов-ская высшая социальных и экономическихнаук
『ロシア・ユーラシア経済調査資料』 890号
ページ: 7-17
Materials for Russian and Eurasian economic researches No.890