本研究は、まず、必要な基礎文献の収集、複写および整理を進めた。 各研究者は、各自の分担を調整しながら、日本プレ近代思想の系譜をあとづけるべくそれぞれの研究を実施した。 さらに研究チームは、あわせて2回の、学術的なワークショップを開いた。すなわち、研究協力者・伊藤祐吏、野口良平の両氏の研究成果を検討し、研究代表者(橋爪)の論文“One Step Further from Max Weber"を吟味するなどした。この英文の論文は、山崎闇齋の正統論に加え、伊藤仁斎、荻生徂徠らの新儒学、本居宣長の国学を合わせた効果が、プロテスタント改革派のそれに匹敵するという見解を明らかにするもので、報告書に所載してある。 研究協力者、伊東祐吏は「丸山眞男と『近代の越克』」、「丸山眞男と『開国』」の二本の論文において、戦前期における「近代の超克」から「近代化の不徹底」への丸山の転回、開国論文や古層論文における無思想の理解の不徹底、の意味するところを明らかにした。同じく野口良平は「二つの世界の往還」において、中里介山『大菩薩峠』を受動的な関係性が能動的関係性へ転回する近代の本質をテーマとするものと読み解いた。 これらの研究により日本プレ近代の系譜のこれまで明らかにされなかった側面が照射され、新たな像を明らかにしたと結論できる。
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