本研究は、第二年度かつ最終年度に当たる本年度において、第一年度の研究実績を踏まえて、計画にしたがって順調に実行されてきた。本研究の目的が、ガンディーによる近代文明批判のエートスの形成をヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教、キリスト教との関わりで探ることであったから、報告者は、前三者の中に「現世逃避型瞑想」を、最後者の中に「現世内的禁欲」を見出したマックス・ヴェーバーの概念を用いて、「アヒンサー」や「不所有」を中心とするガンディーの基本的諸信条の宗教的独自性を浮き彫りにすることに努めた。その作業を通じて、不可触民制度をめぐるガンディー=サナタニスト論争、およびガンディー=アンベードカル論争など、別途本格的に検討すべき論点についても一定の知見を得ることができたが、これらは、すぐれて個別インド的事柄であることから、次年度以降の研究課題とすることとした。 文献の収集および分析の主要な作業は、予定通り、本学の夏休みに当たる2007年8、月にスタンフォード大学(合衆国)においておこない、10月より二年度を通じての研究成果のまとめと研究報告書の作成に入った。その成果は、『香川法学』(第27巻第3・4号)に掲載された。なお、関連する研究成果として、「マハートマ・ガンディーの経済思想-チャルカー運動の再評価-」を執筆し、『経済思想-非西欧圏の経済学:土着・伝統的経済思想とその変容-』(第11巻)(八木紀一郎編、日本経済評論社)に掲載された。ただし、同年11月に関連テーマの「グローバル化時代におけるガンディー思想の意義」についてインド・ウダイプルでの国際研究集会にて報告する予定であったが、渡航が日程的に困難となったためにこれを断念し、代替措置として10月に日本南アジア学会にて報告した。
|