研究課題
基盤研究(C)
昨年の調査により山東省徳州南方臨邑近郊の石家村清真寺に多量のアラビア語、ペルシャ語の古写本が未整理のまま保存されていることが解った。また、済南市の清真南大寺の石碑「来復銘」につき調査したところ、明末清初の常志美、舎起霊による山東学派成立以前に陳思を代表とする陳一族によりイスラム哲学の漢化の努力がなされていることが明らかになった。「来復銘」に読み取れる思想の特長は、宋代の儒教哲学者張横渠の気一元論を援用してイスラムの宇宙生成論を説明していることである。中国イスラム哲学者は明末清初にかけて西アジアで発達した存在一性論を基礎に中国的存在一性論である有一元論を確立する。「来復銘」は山東地方ではしかしながら、陳一族とその後に成立する山東学派の関連性は現時点では不明である。この現地調査の一部は東方書店刊行の「東方」309に紹介した。山東学派の思想的傾向を調査する過程で、中国イスラム思想家たちが朱子学の概念である「全体大用」を中国イスラム思想の文脈の中で独自の意味に使用していることが明らかになった。朱子学では「全体大用」を人間の心の「全体大用」、すなわち心の本質と属性を合わせたものという意味で使用している。これに対し、中国イスラム思想家たちは真主(アッラー)の「全体大用」という使い方をしている。これは、中国イスラム思想家たちが「全体大用」の語をイブン・アラビー系統の存在一性論における「ムハンマド的実在」の概念の訳語に当てているからである。昨年の雲南大学における研究大会で中国イスラム哲学における「全体大用」の意味に関する研究を発表したところ、ハーヴァード大学の杜維明教授、ニューヨーク州立大学のチテック教授から発表内容が高く評価された。この研究内容は英知大学論叢サピエンチア41号に発表した。
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サピエンチア 英知大学論叢 41
ページ: 269-287
The Global Significance of Local Knowledge Proceedings of Nanjing University-Harvard-Yenching Forum for Dialogue between Chinese and Islamic Civilizations 1
ページ: 163-173
東方 309
ページ: 2-6