1.鎌倉時代の経絵に関する基礎的な情報の収集整理につとめ、現存作例の所在確認とデータの収集を行った。 2.研究の基盤となる、平安時代および同時期の中国朝鮮の経絵に関する情報の収集と整理についても積極的に行った。特に時代によって写経の対象や契機に差異があったのかどうかについて史料による分析を進めている。 3.申請に当たって重要な目標とした、既に申請者が過去の調査で作成収集済みの東アジア各国の経絵2万点におよぶ写真資料(フィルム・紙焼き)の整理とその画像データ入力を重点的に行い。本研究補助金で購入し得た処理能力に優れたPCとスキャナ等を駆使して、ほぼ8割方のデータ入力を終えることができた。この画像データベースが構築されることによって、比較検討の作業が飛躍的に容易になり、分析の精度と確度が格段に高まることは確実である。また、そのデータを逐次整理するとともに、それらの比較検討作業を進めているが、膨大なデータでもあり残り2カ年間の研究が必須である。 4.主要な調査対象である経絵作例について、合衆国のNew York Public Libraryおよび奈良国立博物館などで調査撮影を実施した。前者ではあいにく展示の都合などのため予定した全資料の調査は行い得なかったが、後者では十分な時間をかけて重要な作例の検討を進めることができた。しかし、国内外ともにさらに調査が必要な作例の存在が明らかとなり、19年度に実施する予定である。 5.鎌倉時代の経絵と不可分な関係にある高麗の経絵に関して、徹底した検討と分析を行い、彼我の違いとそれぞれの特質について十分な知見と今後の展望が得られ、その成果は19年4月に韓国仏教美術史学会春季大会の招待講演で発表した。
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