平成18年度においては、カタログ化作業の基本をなすデータベースの項目を決定し、平成0〜9年度に作成した簡略なデータベースを元にして新たに画像を含む完備した入力フオーマットをデザインした。10月末より11月はじめまでウィーンおよびロンドンにおいて海外調査を行ない、主として大英博物館所蔵のティントレット派素描の実見調査、およびロンドン大学ウィット・ライブラリーでマーケット上のティントレット派素描作品のデータのチェックを行なった。大英博物館のイタリア素描担当キュレイター、ヒューゴ。チャップマン氏の協力により、同館所蔵の関連作品すべてのカラーのデジタル画像を入手するとともに、同館のデータベースから関連する文献情報等の全面的な供与を受けることができた。平成19年2月末から3月はじめにかけては、私費によりマドリードに調査旅行を行ない、プラド美術館で開催中の「ティントレット展」を視察するとともに、関連する国際シンポジウムに出席し、各国の代表的なティントレット研究者だちと意見交換を行なった。特に、これらの海外調査を通じて、大英博物館所蔵の素描アルバム(90点)について、様式的観点からの年代推定、および当アルバムのスペインにおける来歴情報について、新たな知見を得ることができた。また、年間を通じて、資料収集と入力作業を継続するとともに、版画素描関連の文献調査を行ない、次項にあげるいくつかの論文を執筆・公刊した。
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