平成19年度においては、主として、前年度に大英博物館から収集した画像資料および文献資料の検討、入力、執筆作業を行なった。11月26日より12月3日まで、ウィーン、フィレンツェにおいて海外調査を行ない、まずウィーンでティントレット後期と密接な関連のあるティツィアーノ作品の重要な展覧会を視察、次いでフィレンツェのウフィツィ美術館素描版画室を訪問し、同館が所蔵する多数のティントレット派素描の実見調査を実施し、データベースに反映させた。同館室長のマルツィア・ファイエッティ氏と意見交換し、また翌年度における画像資料の入手に関して合意を得た。さらに、3月29日に国立西洋美術館主催による国際シンポジウム「ルネサンスのエロティック美術-図像と機能-」(美術史学会後援)のモデレーターを担当し、同シンポジウムのために「ヴェネツィア絵画におけるヤコポ・カラーリオのエロティック版画の反響」と題する口頭発表をしたが、同発表は本研究課題成果の一部であり、ティントレットによる版画の利用と素描作品への反映を論じている(2008年度にイタリア語で刊行予定)。以上とともに、新たに計画した作業として、17世紀のマルコ・ボスキーニによるヴェネツィア絵画の案内書の版本コピーを入手し、そこに記載されたヴェネツィアの教会所蔵のティントレット派作品をすべてデータベース化する作業を続けている。これは、現在では失われた教会設置作品をチェックするためのものである。
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