研究課題
基盤研究(C)
1.中華民国期上海の各種アマチュア組織による音楽を含めた遊芸活動の実態解明民国期の上海では多くの移民が会館や旅滬同郷団体を設立し、また政治・社会・社会教育など各運動の拠点ともなって多様なアマチュア団体が存在した。諸団体はメンバー間の感情の聯絡(親睦)を重んじ、京劇、崑曲、江南絲竹、新劇、体育、洋楽、粤楽など、当時流行した遊芸の愛好組織を設置し活動を奨励した。今回は、今まで詳細な報告がなかったこの遊芸活動について、新聞資料(申報)と団体会報、上海市教育局の諸記録にもとづき、演目や上演者の背景など実態を調査した。遊芸は経済発展で生じた余暇の有効に利用する娯楽にとどまらず、各種被災者や孤児支援、抗日運動支援の義損、社会的な祝祭行事にともなうページェントとしても機能したことがわかった。諸団体はしばしば連携し、得意な目を携えて他団体の遊芸活動に参加した。遊芸は団体どうしをさらに固く結びつける媒体となったのである。このほか社会教育団体は、大衆を啓蒙する演講の傍ら、かれらの興味をひきつける遊芸を披露した。小学生の歌舞劇や団員の楽器演奏、勧世歌や劇仕立ての演講などが中心であった。遊芸ネットワークの構築では、多方面で優れた能力を発揮したマルチな人材の貢献も大きい。以上の考察により、従来、洋楽受容や専門家の言節分析に偏ってきた民国期の音楽研究の欠けを補い、アマチュア市民とその団体が、遊芸の創作維持にも積極的にかかわったことが明らかになった。2.上記遊芸活動の過程における「国楽」概念の変遷を跡付けた。国楽は、新文化運動や五四運動を契機として現れた概念だが、その実態は、移民都市上海におけるアマチュア団体の試行錯誤のなかで醸成されたと。そして身近な音楽の総体から汎中国的な音楽へと、概念も昇華をとげた。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
『東京芸術大学音楽学部紀要』 第33号
ページ: 15-34
『中日比較音楽国際シンポジウム予稿集』
ページ: 403-410
『中国都市芸能研究』 第6輯
ページ: 13-35
Bulletin No.33(Faculty of Music, Tokyo Geijutsu Daigaku
Journal of the Japan Association for the Chinese Urban Performing Arts No 6
Proceedings of the 7th China-Japan comparative music conference, Wuhan, Sept.