研究成果としては、中近世の扇面画の画題およびその使用法に焦点をあてて「中近世絵画史における扇絵-扇にあらわれた美意識-」(『美術京都』38号、平成19年3月)にまとめた。ここでは、個々の画題だけではなく、それらの集積を鑑賞の対象とする扇面貼交形式が室町時代から流行する点、研究代表者が従来おこなっている扇面草子形式の絵画の受容についても、扇面貼交形式と同様の観点から考えることができることに注目をした。また、「釈迦堂縁起-釈迦信仰の増幅-」(『美術フォーラム21』15号、平成19年5月)では、狩野元信筆釈迦堂縁起について、本尊を描く構図を分析することにより、その図様が本尊の開帳と絵解にとって、いかに効果的に機能しているかを論じた。このような視点は、他の縁起絵巻の分析にあたっても援用できると考えている。 また、平成18年度は基礎資料の収集とそのデータベース化および分析を中心的におこなった。 データベース化に関しては、15世紀から幕末期までの時期に制作された中国主題の絵画を対象にした。韃靼人図については、平成17年度から調査を進めており、その画像資料を細部にわたり比較可能なデータとした。また、帝鑑図については、これまで収集してきたスライド資料をデジタルデータに変換した。そのほか、美術全集、展覧会図録等に収録されている作品についても、できる限り細部の確認が可能なデータとした。これらのデータを用いた比較検討作業は現在続行中である。
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