9年度は、前年度までで調査し、集積していたデータ類にもとづいて、韃靼人狩猟図についての口頭発表(意匠学会例会、19年9月)、富士参詣曼茶羅についての口頭発表(風俗史学会、19年10月)をおこない、韃靼人図については意匠学会学会誌『デザイン理論』に投稿した(20年6月刊行)。この論文において、15世紀に中国から伝来した韃靼人主題を、狩野派を中心とする室町時代の絵師たちが、どのように絵画化をおこなったかについて、個人蔵韃靼人図を中心に論じた。とくに、中国から伝来した段階ではおそらく巻物形式の小画面であり、それがまず、押絵貼形式の屏風になり、さらに屏風絵や襖絵として描かれるようになった経緯を明らかにした。また、岡山県蓮台寺、東京国立博物館、東京芸術大学美術館および川越喜多院において、狩野派を中心とする襖絵・屏風絵の調査をおこなった。さらに、19年9月には上海博物館(中華人民共和国)において、関連中国絵画の調査をおこなった。
|