1)今年度は古典的支芸作品の中から「万葉集」、「古今和歌集」、「源氏物語」「山家集」等を選び出して音感覚についての分析を開始し、自然音、特に鳥や虫の鳴き声に対する音感覚に関しては上古から中古にかけて変化が生じた可能性のあることを突き止めた。 2)06年9月山形県を中心に酒田市まで芭蕉が「奥の細道」紀行で通ったいくつかの地点で地理的条件と音響的環境を実地調査。芭蕉没後300年以上経っても尚変わらぬ要素が多く存することを確認した。 3)07年1月他研究課題の研究分担者として「芸道における文芸的美意識-山田流箏曲<小督>を例に-」と題する発表を行い、謡曲<小督>から「平家物語」小督へ、さらには「源氏物語」賢木にまで遡ることのできる美意識の系譜が存することを指摘した。 4)海外共同研究者(中国)との研究連絡および関連資料の収集のために、06年9月湖北省武漢市武漢音楽学院および湖北省博物館、07年2月雲南省昆明市雲南民族博物館および雲南省博物館、07年3月福建省厦門(アモイ)厦門博物館を訪問した。 5)来年度の研究の重点項目としては、「源氏物語」若菜下の六条院女楽についての音楽論を取り上げ、「宇津保物語」および「文選」等の中国の古典との比較・対照を通じて分析を進めると同時に、研究対象とする古典的文芸作品を「平家物語」等の中古から江戸近世にまで拡大し、音感覚史上「源氏物語」と並んで特筆すべき「芭蕉句集」および「芭蕉文集」における音感覚の分析に着手する予定。
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