本研究の最終年度に当たる平成21年度は4年にわたる研究成果の総括を中心に行った。 (1) 平成18年度から平成20年度にかけて芭蕉の「奥の細道」紀行の主要地点を実地調査したが、今年度は彼の全発句における音感覚を精査分類した資料集「松尾芭蕉全発句における音感覚」を作成した。 (2) (2)上記の研究に基づいて2009年9月中国江蘇省南京師範大学で開催された第8届(回)中日音楽比較国際研討会の席上「詩人的音感覚与音楽性‥‥松尾芭蕉「奥州小道」之聴覚世界的一个断面‥‥」と題する発表を行った」。 (3) 「源氏物語」全五十四帖における音感覚に関するすべての記述を集成して分類し、資料集「源氏物語の音感覚」を作成した。 (4) 現在は紙媒体の研究成果報告書の提出は義務付けられていないが、紙媒体の利便性を重視し、また中国の音楽学学界からも批判と意見を抑ぐために研究成果報告書として「音感覚と美意識」(中国語訳文1点、自筆論文4点、寄稿論文1点、および上記(1)と(3)の資料集2点を収録。A4版総ページ数153頁を刊行した。 (5) 本研究開始当初「音楽とあるの自然音の共存」と考えていたものは現実の音感覚の一形態というよりは、予想以上に文芸的美意識の伝統に深く根差したものであり、構想力の産物と看做すべきものであることが判明した。 (6) 一部分着手したのみで完成には至らなかった「万葉集における音感覚」の資料化は今後の重要な課題である。
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