研究概要 |
本研究は、1650〜1750年の間に、ドイツ・プロテスタント地域で繰り広げられた教会音楽に関する種々の神学的論争について、包括的に研究しようとするものである。当時の当時の音楽に関する一連の神学論争へのレスポンスを体系的に検証し、その系譜を明らかにしていくことを目標にしている。 昨年度に引き続き、資料収集を継続して行った。今年度は、ドレスデン、ザクセン州立図書館(Dresden,Sachsische Landesbibliothek/Staats-und Universitatsbibliothek)およびベルリン州立図書館(Staatsbibliothek zu Berlin)で資料調査を行った。ドレースデンでは、敬虔主義神学に巻する論争の文書から、音楽に関する記述を拾い上げる作業を中心に行った。また、ベルリンではこの時代の音楽と神学の関係を表す主要な説教集や理論書を系統的に調査することができた。 また、収集した資料を電子化するとともに、1600〜1750年を中心とする時代のドイツ・プロテスタント神学資料における音楽に関する記述の包括的データベースを作成を進めていった。このデータベースは、書誌データ以上の資料内容に関わる情報を可能な限り包括的に含むものとして設計している。一般書誌情報に加え、資料分析の過程で、人名、神学資料同士の参照関係、影響関係、聖書引用箇所などを項目としたデータベースの構築を行っている。英語およびドイツ語を使用言語として、将来においてウェブ公開できるようなかたち構築している。ファイルメーカーPro(R)を利用し、ネットワーク化の技術的テストは完了した。 以上の基礎作業を基盤に、当時の宗教音楽思想、教会音楽思想をめぐる神学的葛藤の輪郭を明らかにするとともに、当時の音楽思想形成の過程に関する考察と理論構築を進めている。
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