研究概要 |
本研究においては,イギリス・ヴィクトリア朝の美術を,同時代の文化政策の動向,とりわけこの時代に著しく進展した美術館政策との関連の中に捉え直すことを目指している。今年度は,昨年度中に収集した資料やデータ類,およびそれらをもとにした研究の成果を土台として,次のように研究を推し進めた。 まず,初年度に入手しえなかった文献や,新たに公刊ないし公開された情報・資料等の収集に当たり,ヴィクトリア朝の美術と文化政策に関するアーカイヴを一層充実させた。前年度は主としてヴィクトリア朝初期の美術に焦点を当てたが,今年度はさらにヴィクトリア朝中期および後期にも視点を広げていった。のみならず,今年度も引き続きイギリス国内の関連研究施設(テート・ブリテン,ロイヤル・アカデミー・オヴ・アーツ,ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館等)において,ヴィクトリア朝時代の一次資料(同時代の文献や絵画作品等)の調査を実施した。あわせて,美術をめぐる現代のさまざまな政策やマネジメントの状況を把握するために,最新の展示運営を行っている国際美術展,「第4回スカルプチュア・プロジェクト」展(ミュンスター市)および第12回ドクメンタ展(カッセル市)を視察し,関連する情報を収集した。国内においても,文化政策やアートマネジメントに関係したシンポジウムや学会等に多数参加し,最新の情報の獲得に努めた。 なお,これらの研究を通じてもたらされた成果の一端は,法政大学キャリアデザイン学部紀要(第5号)所収の論文「ヴィクトリア朝のミュージアム思想[III]」に纏められている。
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