研究概要 |
本研究は、19世紀イギリスのヴィクトリア朝美術を、同時代の文化政策の動向、とりわけこの時代に著しく進展した美術館政策との関連の中に捉え直し、それによって美術史研究に文化政策学の視点を取り入れた研究方法を構築していくひとつの試みとなっている。最終年度となる今年度は、昨年までに収集した資料やデータ類、およびそれらをもとにした研究成果を土台として、以下のとおり研究を推し進めた。 まず、ヴィクトリア朝の美術と文化政策に関するアーカイヴをさらに充実させるために、Ch. Whitehead, The Public Art Museum in nineteenth Century Britain,2005やD. Carrier, Museum Skepticism,2006をはじめ、ここ数年で一段と進んだ美術館研究に関する諸文献を入手し、文化政策的な観点からみたときに、美術館がどのような機能や役割、課題を担ってきたのかについて分析・考察した。併せて、今日の美術館政策においてどのようなマネジメントや教育普及の試みが実践されつつあるのかを探るために、アーツ・カウンシル・イングランドによる調査結果をまとめたPublic Value and the Arts in England,2007等を検証するとともに、地域に根ざした美術館活動を展開している国内の例として、十和田市現代美術館や水戸芸術館の視察も行った。 これらの研究を通じてもたらされた成果の一端は、法政大学キャリアデザイン学部紀要(第6号)所収の論文「<美術館>というトポスをめぐる試論1」において公開している。
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