平成18年度には、耳鳥齋と大坂の戯画を所蔵する大阪市立歴史博物館・大阪市立美術館・京都細見美術館・湯木美術館・大阪府立図書館・骨董商の薮本家・岡田家・水谷家・中島源太郎家、森本家その他の個人所蔵家を巡り歩き、写真撮影を中心に資料の収集にあたった。出張旅費と設備備品費および消耗品費が主たる経費となったが、旅費については、大阪府、京都府、兵庫県、和歌山県、三重県、奈良県、愛知県、東京都、そして中国であった。設備備品費としては、デジタルカメラ、フィルム費、写真現像費、ファイルボックスなどであった。なお、大坂画壇に関する研究協力者3名、すなわち伊丹市立美術館学芸員の藤巻和恵、細見美術館学芸員の福井麻純、関西大学非常勤講師の伊藤(旧姓西垣)香を配置して、申請者にとって困難な作業を研究協力者に任せ分担した。3名の協力者には、文献資料の収集、写真撮影、資料のカード化などを行ってもらった。 また、関西大学図書館所蔵の耳鳥斎の絵本『画本古鳥図賀比』、『歳時滅法戒』、『画話耳鳥齋』、『絵本水や空』などの版本は、耳鳥齋にとって重要な一級資料であり、これらの版本は頁数もかなりあることから、時間をかけて調査を行い、写真撮影及びそれらのカード化に着手した。同時に、大正期から昭和期にかけての耳鳥齋と大坂の戯画に関する雑誌記事の発掘作業を進めた。所蔵家相手の調査研究であるため、相手の都合で調査困難となった箇所については次年度に持ち越すことにした。 加えて、耳鳥齋に大きな影響を与えたとも考えられる大坂の大岡春卜の絵手本『和漢名筆・画本手鑑』をはじめ、春卜作とも伝えられる『軽筆鳥羽車』、『鳥羽絵扇の的』、さらに、長谷川光信作ともいわれる『鳥羽絵三国志』、加えて、大坂の竹原春朝斎の『鳥羽絵欠び留』など、耳鳥齋に関係する絵手本類の調査を進めた。主たる研究成果として耳鳥齋と大坂の戯画に関連する論文を5編執筆した。
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