19年度は、前年度に引き続き、諸図書館所蔵の読本の書誌調査とそのデータベース化の作業と、全集や雑誌に翻刻された作品について、内容調査を行い、関連する研究論文の収集と内容分析を行った。調査対象は、京都大学図書館、九州大学附属図書館、東北大学附属図書館で、主に初期読本・談義本・仏教説話・仮名草子作品について書誌調査を行い、作品の体裁と内容の面における様式の変遷を考察した。 初期読本の研究については、国文学研究資料館で行われている「近世後期小説の様式的把握のための基礎研究共同研究会」編(代表:大高洋司教授)『読本事典』の執筆に加わり、山東京伝等の読本作品について、書誌と内容の面から解説を行った。 また、初期読本へ影響を与えた仏教説話・仮名草子の研究として、浅井了意の作品『孝行物語』の翻刻・解説を『浅井了意全集』にて行った。このほか、近世初期刊行の怪異小説研究として、「『曽呂里物語』異板二種について-『目覚物語』と大妻本『曽呂里物語』-」、「『曽呂里物語』二話」の論文を執筆し、『雨月物語』等の初期読本へ影響を与えた『曽呂里物語』について、内容分析と書誌調査の報告を行い、口承伝承や先行説話からの影響、後世の怪異小説への影響について考察した。 さらに、初期読本から後期読本への展開という視点からは、江戸後期読本の代表作『南総里見八犬伝』の主要場面を翻刻し、現代語訳を施し、解説を加えた『南総里見八犬伝 名場面集』を執筆し、初期読本から後期読本への内容的な展開を考えた。
|