日本の近世期、寛延から寛政年間(1748~1800)に、江戸と上方で刊行された初期読本を、(1) 儒学・国学的思想の享受としての面から、(2) 説話の享受としての面から分析し、読本の成立基盤を明らかにしようするのが本研究の目的である。上方読本の都賀庭鐘・伊丹椿園・建部綾足・上田秋成の作品、また山東京伝や曲亭馬琴の文化5年刊頃までの読本作品の世界の背景を考える。上方と江戸の作品に(1)(2)の面においてどのような差異があるのかに留意しながら、仏教長編小説、怪談集、通俗軍談物、通俗白話小説翻案集、浄瑠璃・歌舞伎作品、談義本、啓蒙書、雑史、儒学・国学の書等の作品との影響関係を調査する。特に、文芸作品にも大きな影響を及ぼした仏書や勧化本、三教一致思想の書からの影響や、教訓・説話的要素の濃厚な仮名草子と談義本との係わりについて、諸作品の書誌的調査も含めてデータを収集し、考察していく。
|