「大東亜戦争期における本居宣長受容の総合的研究」について、初年度の18年度は次の作業および発表をした。 1.昭和10年代における、朝日新聞・読売新聞の宣長および国学関係記事の調査・収集をおこなった。約二百件の記事がヒットし、さらにねらいを絞り込んで収集にあたる。 2.昭和10年代に出版された宣長・国学関係書のリストアップおよび一部収集をおこなった。神道関係書が予想外に多い。GHQ発行の『公職追放に関する覚書該当者名簿』や『没収指定図書総目録』などの調査により、戦後に危険思想とされた人物および書籍の全貌を明らかにできた。 3.昭和10年代に出版された雑誌の中で、宣長・国学関係の論文のリストアップおよび一部収集をおこなった。戦時中に刊行された雑誌の一部は国立国会図書館に所蔵されているが、没収され散佚した雑誌も少なくなく、来年度以降に調査・収集を続行するひつようがある。 4.満州事変後からにわかに脚光を浴びた「日本精神」なる概念について、その普及と深化という観点から、収集資料の整理と分析を行なった。 5.近代の宣長受容および国学受容の下準備のため、江戸時代後期における宣長・国学がいかに受容されたかという点について、「(特集)江戸文学のスピリッツ-漢意」(『江戸文学』34号、ぺりかん社、平成18年5月)と「江戸派の出版」(『神戸大学文学部紀要』34号、平成19年3月)と「小山田与清の出版」(『文化学年報(神戸大学大学院文化学研究科)』26号、平成19年3月)の3本の雑誌論文を発表した。
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