「大東亜戦争期における本居宣長受容の総合的研究」について、2年目の19年度は次の作業および発表をした。 1.満州事変を契機として流行した「日本精神論」に関する論文および著作を調査・収集し、それが一九三〇年代の日本における時局思想であったことを突き止めた。 2.近代における本居宣長像を形成した二つの要素(松坂の一夜・敷島歌)の受容と解釈の変容について検討し、大東亜戦争期に激変したことを突き止めた。 3.本居宣長の学統に関する問題(特に荻生徂徠)について、同時代から近代以降へと至る中で形成され、戦後になって定説になったことを実証した。 4.大東亜戦争期(1941年〜1945年)の朝日新聞から本居宣長および国学に関する記事を探し出し、抜粋した。 5.宣長の同時代状況を明らかにするために、「雪岡禅師と江戸派」と「文政期江戸歌壇と『草縁集』」という2本を執筆した。また、受容史という観点から「葛西因是『通俗唐詩解』の解釈戦略」を執筆した。このような準備稿を踏まえて「日本精神論の流行と変容」(緒形康編『一九三〇年代と接触空間』)を著した。
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