研究概要 |
1,三島由紀夫作品の被翻訳書目の作成 作品の海外(特にアジア地域)における翻訳状況についての調査に関しては、日本文学の翻訳数が増加しつつある韓国の状況について調査するため,韓国国立中央図書館,ソウル大学図書館において所蔵図書・雑誌の調査を行った。その結果日本文学の翻訳が1960年代に数多く出版され,それ以降減少していたが,2000年頃以降に再び翻訳作品数が増加した実態が明らかになった。海外で刊行された三島の被翻訳作品の調査を進め,リスト作成の作業を進めた。この研究の成果の一部は「日本近代文学の翻訳状況-翻訳テキストの目録から-」に発表した。 2,『暁の寺』の舞台となったタイ国の歴史・文化と作品との関係についての検証 『暁の寺』(1970)の舞台となった1940年代、作品全体の構想に大きな影響を与えた執筆時の1960年代の二つの時代におけるタイ国の歴史および日タイ関係についての資料を収集した。成果の一部を九州大学P&P共催・福岡市文学館文学講座「文学のまなざし-忘却されたアジア」の一つとして「歴史と幻想-三島由紀夫の『暁の寺』に描かれた昭和10年代と40年代のタイ-」(2006年7月16日、九州大学)として口頭発表した。さらに研究成果の一部をタイ王室の歴史・文化がテキストにどのように表象されているかを検証した論文「『暁の寺』の二つの時代-三島由紀夫のタイ国取材の足跡から-」に発表した。 3,三島由紀夫作品の翻訳をめぐる状況分析と三島作品に描かれたアジア像についての考察 2における調査・分析を発展させた研究成果として、『暁の寺』で表象されたアジア女性のイメージとセクシュアリティの問題について、他の三島のテキストの分析を通して考察した「『仮面の告白』-セクシュアリティ言説とその逸脱-」を発表した。
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