1)三カ年の研究機関の最終年を迎えた今年度は、平敷屋朝敏の擬古文物語四編のうち、特に王朝物語文学との関連性が深い「若草物語」「萬歳」について注釈作業を進めた。年度途中で、研究を客観化・対象化しておく必要性を感じ、国文学研究資料館の共同研究プロジェクト「平安文学における場面生成研究」の第9回研究会(平成20年10月25日)において口頭発表をおこなった。当発表により「ヤマトの古典文学の流れを汲む平敷屋朝敏の物語世界」の存在が、気鋭の古典文学研究者達に認めてもらえた。その際の発表原稿を整形したものと共同討議にっいては、同館『平成20年度研究成果報告物語の生成と受容(4)』に収載されている。2)先行研究では翻刻が紹介されていない写本のひとつである筑波大学図書館蔵『平敷屋朝敏遺稿』(擬古文物語四編のうち三編を収載)について、同館の許可を得て翻刻した。3)平敷屋朝敏の擬古文物語の教材化を目論み(当物語は教育学部レベルの大学生に講読させる古文教材として、レベル的に相応しい)、規範的古文(仮名遣いや漢字の使用等を整えたもの)による「若草物語」のテキストを作成、平成20年度後学期「国文学講読IV」の教材とした。沖縄県民であっても若い世代は朝敏の名を知らず、この授業はアンケート等に拠るところでは学生たちにインパクトをもたらしたようである。4)上記1)・2)・3)の成果を中心に、冊子『研究報告平敷屋朝敏の擬古文物語に関する基礎的研究』(平成21年3月31日出来)をまとめた。後日平安文学の研究者を中心に配布する予定である。
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