上代文学における漢字使用の総体的様相を探るための第一段階として、デファクト・スタンダードとなるべき平準化されたユニコード版テキストファイルの作成を続けた。その結果、万葉集については、歌本文、題詞、左注をはじめ、すべてのテキストにおいてほぼ満足の行くユニコード版テキストファイルができあがったと考えている。また、これに引き続き古事記の入力にとりかかったが、こちらはユニコードにさえ含まれない文字や、異体字が多く、文字の同定作業に非常に時間が取られた。しかし、現在入力が完了し、校正を行っている最中である。近いうちに校正を終えることができよう。一方、これと平行しつつ、日本書紀の入力作業にもとりかかっている。文字数が古事記や万葉集に比べて非常に多いながらも、着実に進んでいる。 一方、完成した万葉集のテキストファイルを用いた結果、これまでよりも遙かに緻密な研究ができるようになり、万葉集の巻ごとの使用文字の分布調査を行った。「万葉集巻九の配列について」(美夫君志、二〇〇七年)には、この分布調査結果の一部が使用されている。また、「万葉集巻-後半部(五四〜八三番歌)の配列にっいて」(万葉語文研究、二〇〇七年)は本研究なしにはなしえなかったであろう。上記分布分析が最も有効に活用されたのはこの研究といって間違いない。さらに、「『天皇の崩ります時に、大后の作らす歌一首』について」(『初期万葉論』、二〇〇七年)にもその一部は使用されている。
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