昨年度の研究の進展をもとに、今年度は、 (1)宝永元年・二年の俳書に関する綱羅的調査 (2)これまでに蓄積してきた「元禄時代俳人大観」のデータ化 (3)『炭俵』と『別座敷』に見える俳人の略年譜作成 (4)先行文献の精査と連動させた注釈作業への着手 (5)「かるみ」提唱期の地方俳諧の調査を活動目標に掲げて、研究を開始した。(1)は予定通りに進み、「元禄時代俳人大観(二十九)」「同(三十)」(『近世文芸研究と評論』72・73)として成果を公表。(2)も順調に進行中。(3)(4)(5)は数度の打ち合わせと研究会をもち、一定の見通しができ、方向性も定まってきたので、来年度はここに力を入れて、研究の総括をする予定でいる。なお、(2)に関しては、データが整備された段階で、書籍の形での出版を考えており、出版社との打ち合わせも進んでいる。 活動をより具体的にのべると、(1)のためには、尾道大学の下河内文庫、三原市立図書館、石川県立図書館の月明文庫に、俳書の調査に出かけ、資料の探査を行った。されは、昨年度の調査旅行で見えてきた、地方俳諧を調べることが、芭蕉たちの「かるみ」をより十全に理解する上で、きわめて有効な方法たりうるとの考えに立つもので、実際に出向いて資料を見ることで、わかってきたことが多々ある。また、調査旅行の折の時間も使いながら、研究代表者と研究分担者・研究協力者の間では、以上のことが共通理解として共有されるに至り、それが研究会の開始を促し、個々人による作業と並行しつつ、それらを踏まえて、共同作業を進める段階に及んでいる。来年度、これを継続し、研究を深め、まとめていくことになる。
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