今年度は、当研究の総括の年にあたる。3年間のまとめとなる冊子の制作を念頭におきつつ、今年度の計画としては、次の5点を設定した。すなわち、 (1)宝永三年に敢行された俳書の調査とそれに基づく「俳人大観」の作成 (2)「元禄時代俳人大観」全体の整備 (3)『炭俵』『別座敷』入集者略年譜の完成 (4)『炭俵』(ないし『別座敷』)所収歌仙の注釈 (5)『備後砂』所収歌仙の注釈である。(1)は『近世文芸研究と評論』誌上に2回の掲載を果たし、(5)についても「春の日の」歌仙の評釈を同誌に掲載した(次項「雑誌論文」参照)。(2)と(3)についても稿が成り、それらは(1)・(5)ともども、『平成十八年度〜平成二十年度科学研究費補助金研究成果報告書『炭俵』『別座敷』の分析による「かるみ」の研究』(平成21年3月31日和洋女子大学佐藤勝明研究室)の中に収めた。(2)については、来年度中の刊行をめざし、校訂作業を続行している。これらの作業により、「かるみ」の特色がより明確になってきたのはもちろん、そのほかにも、地方俳譜と比較しつつ蕉風の「かるみ」を追究すべきであるとの知見を得たことが、大きな収穫といえる。これは、次の研究に引き継いでいく予定である。
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