本研究は、近世以降現在までの東海地方の俳諧資料を収集し整理して、その特徴を明らかにすることを目的としている。そこで、当初の研究実施計画に従い、次のことを行った。 1、個人所蔵の資料の撮影・複写につとめた。 2、名古屋市蓬左文庫所蔵 雑賀文庫を中心に、尾張狂歌の影響関係を視野に入れて、俳諧関係者の狂歌資料の収集につとめた。 3、遊戯的な雑俳を含む資料紹介・翻刻が少ないので、次の2点を翻刻紹介した。 (1)翻刻紹介「文車追善 露地図」(「椙山国文学」31号 椙山国文学会 2007年3月) 従来ほとんど研究対象とされなかった俳諧一枚刷の魅力と意義を問い直す機運がある。「文車追善 露地図」と いう懐紙二枚つづきの一枚刷は、所載する供号から、天保8年頃から11年の間に興行されたものと推定できた。そして、尾張狂俳中興の祖と称された芝石も句を寄せ、伊勢から、江戸・遠江・近江・京・大坂・須磨・常陸・阿波・豊前・伊予他の全国的な俳人たちをつなぐネットワークが機能したことが窺えた。そこで、翻刻紹介した。 (2)翻刻『妄言反古志津保具双希』全とその紹介(一)(「社会とマネジメント」4巻2号 2007年3月) 本書は、享和元年頃から文政13(天保元)年頃までの真酔の狂文・序跋などを、玉晃が収載したものである。真酔は狂俳点者もしたので、この中には雑俳に分類される狂俳集や地口巻の序も含まれる。月丸序は、神道やインド、中国の書籍を学んだ真酔による、今の時代に必要な真におもしろい戯文集であると称える。当時の尾張の町人、彫工を家業とした階層の教養の高さと、酒落気が窺われておもしろい。そこで、上巻を翻刻して紹介した。
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