[能楽資料の調査と整理] 新しいパソコンとデジタルカメラを導入でき、情報入手の簡便さは比較にならないほど向上した。資料調査に各機関を訪れたが、思いがけない新発見もあって、副題目的以外の成果も入手することができた。 I、大蔵弥右衛門家伝書について 従来、ワープロで入力していたものを新しいパソコンに入力し直している。まず学会未紹介の大蔵虎明『間狂言台本』の翻刻を行なっている。和泉書院から出版する企画も内諾を得ている。大塚光信編『大蔵虎明狂言集』を入手できたこともタイムリーであった。虎明年譜も別の研究者によって企画されているとも聞いている。早く公にすることが私の責務であろう。 なお、2月24日に関大図書館所蔵鷺畔翁狂言台本による復曲《寝代》を大蔵流狂言方安東伸元氏の協力を得て、私の解説も含め千里中央A&Hホールで行なったことも報告しておきたい。鷺流最後の宗家だが能楽の世界から追放された畔翁のことを考えることは広く流儀の存亡を考える大事な体験で機会でもあった。 II、新生田文庫本の整理 これもワープロで入力していたものをパソコンに入力し直している。初期アサヒビールにとって重要な役割をなした生田秀の経済人にして文化人であった見識の広さを再確認している。旧文庫は基本図書中心であったが、能楽関係が主な新文庫本も実に幅広く収集している。大阪女子大(現、大阪府立大)所蔵の『能楽写真界』にも生田秀のことが記載されてあり、のみならず同書が従来活用されていなかった資料であることも判明し、能楽学会の催しである3月5日の能楽フォーラム「大阪・神戸の能楽写真」(大阪大学中之島ホール)に提供したことであった。それについては『国文学』(関西大学)91号で「近代大阪の演能場」と題して報告した。 なお、長野県須坂市博物館に「世阿弥十六部集」松廼舎文庫の成立にかかわる情報があったことを報告したい。
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