本研究は、埋もれたままになっている大阪から刊行された雑誌を解明することを目的とした。大阪は経済的に東京に次ぐ第二の都市として明治以降発展してきた。他の地方都市とちがって経済力のある大阪では、独自の雑誌文化を育ててきた。しかし、その多くの雑誌が戦争などもあって散逸したままになっている。そのため、今日までその研究が全く放置されてきた。どのような雑誌が大阪から刊行されたのか、具体的にその実態が明らかにされていない。そこで、本研究では、一冊一冊の雑誌を実際に直接手に取って確認するところから作業をはじめた。本研究では、明治二十四年七月に創刊された「葦分船」から平成元年一月に発刊された大阪女性文藝協会の「鐘」まで、「新劇」や「劇」などの演劇雑誌、「龍船」「新文藝」などの文藝同人雑誌、「セレクト」などの美術雑誌、「ホームサイエンス」などの科学雑誌、「大阪詩人」や「誌と真実」などの詩雑誌、「会館藝術」や「学海」などの文化雑誌、「新大阪評論」や「政治と文学」などの評論雑誌など、六十四雑誌の内容細目と解題を作成した。その大部分は、これまでどこにも紹介されたことのなかった雑誌である。本研究により、文学・演劇分野だけでなく、思想・文化・社会・歴史などの広い分野における研究にも貢献するものと確信する。
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