研究概要 |
1.<基礎的資料の収集> 今年度は3年間の研究の土台作りのため,基礎的な資料の収集を行った。まず,禅林文学に関わる抄物大系(全35冊)を購入した。また,思想史に関する基本的な文献(日本思想大系一式)や古辞書の影印,その他抄物に関する影印や研究書などを揃えた。 2.<政治思想に関わる項目の調査> 政治思想に関わる項目の調査として,主に『帝鑑図説』の諸本調査を行った。当初,国立公文書館内閣文庫所蔵の慶長古活字版(いわゆる秀頼版)『帝鑑図説』が『後素集』の記事に影響を与えているように考えていたが,「羊車遊宴」の挿絵と『後素集』の説明とが一部合わないため,不審に思っていたところ,今年度の宮内庁書陵部における調査によって,書陵部A本(萬暦元年・明版2冊本)とB本(明版12冊本)の挿絵が『後素集』の説明に合っていることが判明した。なお,A本は図様が慶長古活字版とはかなり異なっているのに対して,B本は慶長秀頼版に図様が近いことも判明した。このことは,『後素集』の研究のみならず,『帝鑑図説』の研究においても,重要な発見であろうと思われる。今年度の調査によって,『帝鑑図説』と『後素集』の関係についての論考をまとめる準備がある程度整ったので,19年度には成果をまとめ,然るべき学術雑誌に投稿する予定である。 3.<日記資料の調査> 昨年度は思いの外校務等が多忙であったため,予定していたほど進んでいない。19年度は禅僧の日記資料も視野に入れて調査を進めたいと考えている。 4.<関連研究会への参加> 今年度は『後素集』研究会が一度も開催されなかったために参加はしていないが,その代わり,禁裏本の研究に関わる研究会や『月庵酔醒記』研究会に参加し,新たな知見を得ることができた。
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