近年、中世文学研究においては古今集注など多様な注釈書の重要性が指摘されている。法華経注は多数の説話や和歌を収め、文学のみならず日本文化史を考える上でも貴重であり、中・近世の説話世界の実態を伝える好資料である。 本研究は、田舎天台と称された天台宗談義所の中でも際だって学問的活動が活発であった関東・甲信越地域の主要な天台宗寺院や、天台関連資料が伝来する中・四国地区の寺社を対象として、資料の実態を把握し、その調査研究を通して、天台僧の学問的営為を立体的に捉えようとするものである。法華経注釈書の成立事情、そこに収録される多数の説話や和歌、慣用表現等について、形成と享受の実相を解明する端緒としたい。
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