研究概要 |
ウッド夫人とメアリー・ブラッドンの長編小説に関して、なお考察が不十分と考えられる3つの視点を提示した。(1)不倫小説としてのセンセーション・ノヴェル、(2)探偵小説としてのセンセーション・ノヴェル、(3)ウッド夫人、ブラッドン、ディケンズの小説の相互関連。 (1)センセーション・ノヴェルの中枢に「反逆する娘」(subversive daughter)と「反逆する妻」(subversive wife)がいることを指摘し、彼女たちが「不倫小説」を生み出す原動力となっていることを解明した。 (2)ドイルの前に位置するセンセーション・ノヴェルの「細部」を重視する探偵たちは、19世紀末葉に興隆する犯罪科学(犯罪人類学、顔写真、指紋、毒物学)を先取りしていることを指摘した。 (3)ディケンズ、ウッド夫人、ブラッドンの小説との比較検討を通じて、そこに、夫への不信を抱く妻、不倫願望を持つ妻、不倫妻の秘密を暴き出す男の探偵というパタン化された構図があることを解明した。 ※以上の研究内容は、研究代表者の「平成18〜19年度科学研究費補助金研究成果報告書」にまとめられている。また一部は、研究代表者の次の博士論文に反映されている。Dickens in the Late-Victorian Context: Socio-Cultural, Politico-Economical, and Literary History in Bleak House, Great Expectaions and "Sikes and Nancy"(博士論文、東北大学大学院・文学研究科、平成18年3月27日取得。
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